これは美しい!アール・ヌーヴォ―を現代に復刻させるマリエラとは?
スペイン発のジュエリーブランド・マリエラ。
スペインというとロエベやルポ バルセロナにカンペールなどのブランドが有名ですが、マリエラはそんな中でも19世紀創業と、屈指の名門として君臨してきました。創業当時からのアール・ヌーヴォ―スタイルを基調にしたデザインは、まさに生きたアンティークジュエリー。その煌びやかで絵画のような作品の数々は、実際に「ジュエリーでありながらアート」としても認められています。
そんなマリエラの魅力は、歴史,ジュエリー製造技術,デザイン・・・とても多岐に渡っています。
この記事では、マリエラについて解説いたします。
マリエラってどんなブランド?
マリエラの始まりは、1872年にこの世に生を受けたリュイス・マリエラ・イ・ロザス氏から始まります。マリエラは、氏を指してジュエラーやデザイナーではなく、「芸術家」と称しています。
リュイス・マリエラ・イ・ロザス氏(以下リュイス・マリエラ)はスペイン バルセロナの名門宝石職人一族の出で、若かりし頃より世界博覧会でゴールドメダルを受賞するなど、ジュエリー業界でその頭角を現していました。
当時のヨーロッパは「アール・ヌーヴォ―」が一世を風靡していた時代です。アール・ヌーヴォ―とは直訳すると「新しい芸術」という意味のフランス語です。これまでは注目されてこなかった動植物といった有機物をモチーフにしていること。また、従来の芸術の方程式を一層し、自由で優雅な曲線美でそれらモチーフを表現すること。美しくもエレガントであること。さらにこれらを貴金属やガラスで表現していることが特徴的なスタイルであり、まだ世界大戦に入る前の華やかなヨーロッパを象徴するデザインでした。
リュイス・マリエラは、このアール・ヌーヴォ―を、七宝(ホーロー)で表現するという驚くべき手法を採ります。七宝の詳細は後述しますが、当時スペイン国内では七宝技術は廃れていたと言います。しかしながらリュイス・マリエラが手掛けたことで、「バルセロナ七宝」と呼ばれる新風がスペインのジュエリー界に吹き込まれることとなりました。
その後リュイス・マリエラはアール・ヌーヴォ―を基本としつつ、独自のデザイン性をも大切にした宝飾品を世に送り出し続けていきます。その銘品の数々からスペイン国内のみならずヨーロッパ全土でリュイス・マリエラの名は知れ渡り、国際的な賞を総なめにするようになります。
なお、1910年に入ると、アール・ヌーヴォ―に代わってアール・デコが流行するようになります。華やかで優雅な曲線を活かしたアール・ヌーヴォ―とは対照的なアール・デコとは、幾何学模様や直線を活かした、モダンスタイルです。カルティエがジュエリー界でアール・デコスタイルに先鞭をつけた逸話は有名ですね。時代が「瀟洒な一点モノ」よりも「大量生産によって大衆が楽しめる」「モダンな生活スタイルにマッチする」へとニーズが変遷したことが大きいでしょう。
しかしながらリュイス・マリエラは、一貫してアール・ヌーヴォ―にこだわり続けました。現在、リュイス・マリエラの遺志を受け継ぐブランド「マリエラ」では、彼の往年の作品をデザイン・製法ともに再現することで復刻を実現しています。また、美術館でジュエラーとして初めて展示されるなど、宝飾・芸術産業ともに注目度を集めています。
リュイス・マリエラが得意とした、絵画のように華やかで美しいジェリーたちは、大量生産とは無縁です。そのため1995年には日本にも正規ブティックができるものの東京・大阪の高島屋のみと、決して手広い販路を有しているわけではありません。
一方で「待ってでも欲しい」といったジュエリー通からマリエラは支持されており、その作品群には、人を魅了する確かな輝きが存在します。
マリエラが人気の理由
マリエラの人気の理由。それは、とにもかくにもジュエリーとしての美しさ。華やかさ。そしてアンティークのように、一点モノとしての魅力があるところです。このジュエリーを生み出す大きな柱となっているのが、「マリエラ七宝」です。
七宝は七宝焼きのことで、世界中で重宝されてきた伝統工芸です。エナメルや琺瑯(ほうろう)と呼ばれることもありますが、実はその製法は多岐に渡っており、それぞれで見た目や質感が全く異なります。
マリエラの七宝は、不思議な美しさを有します。これをバルセロナ七宝と呼んでおり、リュイス・マリエラが陶磁器で用いられるリモージュ製法(プリカジュール・エナメル)から着想を得て開発しました。
半透明の優しい色合いが特徴的で、それでいて細部にまで色が入れられているため、本当に、まるで絵画のような美しさを有します。これは独自の配合・焼成によるものであるため、マリエラならではの大きな魅力の一つです。
また、多くのエナメルは割れやすいという側面があるのですが、マリエラ七宝は耐久性にも考慮されているとのこと。さらに言うと、現代では珍しいアール・ヌーヴォ―調の意匠には世界各国のジュエリー通から高評価を博しています。
前述の通り、リュイス・マリエラが製造していた当時の銘品たちを現代に復刻させている形になるのですが、リファインをする必要がないほどにそれらは美しく、精密・精緻です。この秘訣は、彫金技術がきわめて高いことにあるでしょう。
アール・ヌーヴォ―は、有機物を表現するために、貴金属を精彩加工することが欠かせません。そのため彫金によってディテールを削ぎ落したり、エングレービングしたりする必要があるのですが、マリエラはそれらを熟練した彫金師が丁寧に手作業で生み出してきました。
なお、マリエラのデザインは全て意匠登録(模倣を防ぐための制度。登録によって意匠権を確保できる)されています。
マリエラの買取相場
高度な七宝と彫金で、アール・ヌーヴォ―時代のアンティークを実現しているマリエラ。当然ながら価値はきわめて高く、中にはオークション級の個体も存在します。
一般的に流通しているものでも高額。なぜなら年間製造数が限られており、かつ美しい「絵画あるいは芸術」を実現するために、上質な貴金属や貴石を用いているためです。
当店GREEBERでのマリエラの参考買取相場をご案内させて頂くと、おおむね数万円~。
デザインが精密になると30万円を超える価格でお買取りさせて頂くこととなり、数あるブランドの中でも高額買取対象となっております。
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もっとも、マリエラは「知る人ぞ知る名門」といった立ち位置のため、全てのジュエリー買取店で高額買取しているとは限りません。「人気どころしか買わない」という買取店だと特にその傾向が強いでしょう。
また、マリエラは華やかなデザインを実現するためにサファイヤやルビーといった色石を用いることも少なくありません。そのため経験のない鑑定士だとグレードの見極めが不適切な場合があり、買いたたかれたり地金だけの買取になったりといったケースを耳にします。
そのため、マリエラのような、ジュエリーとしても芸術としても貴重な製品は、あらゆるジュエリーブランドに造詣が深く、買取実績を有するお店で売却しましょう。
まとめ
マリエラについてご紹介いたしました。
マリエラとは、19世紀にリュイス・マリエラ氏が製造していた、見事なジュエリーを現代に復刻させていること。
アール・ヌーヴォ―と呼ばれる、自然の草木や動物をモチーフにした、美しく優雅なデザインスタイルが根幹にあること。
その類まれな美しさを実現するために、七宝や彫金といった高度な製法を用いているのがマリエラです。
いつの時代も色褪せない、価値あるマリエラを、ぜひご堪能してみてはいかがでしょうか。