採れる場所は世界で一か所!?レッドベリルの稀少性と買取相場
「ベリル」と言う用語はあまり聞きなじみがないかもしれませんが、和名は緑柱石(りょくちゅうせき)で、エメラルドやアクアマリンなどと同種の鉱物となります。
ベリルは含まれる元素によって色合いを大きく変える石であり、かつそれぞれで宝石名が変わるという珍しい存在でもあります。
そんなベリルの中でも、美しくも妖艶な濃い深紅の石が存在します。それが、レッドベリルです。
惹き込まれそうな色合いもさることながら、その稀少性でも大きな話題を集めております。どれくらい稀少かと言うと世界でアメリカのユタ州でしか採掘できず、かつその割合はダイヤモンドが15,000個とれてようやく1個のレッドベリルが見つかるほどとか!
それだけの稀少性ですから、もちろんレッドベリルは高額買取の対象となります。
この記事では、レッドベリルとはどのようなジュエリーであるかを解説するとともに、レッドベリルの買取相場や買取査定のポイントをご紹介いたします。
1. レッドベリルとは?
① DATA
鉱物名:ビクスバイト(Bixbite)
和名:緑柱石(りょくちゅうせき)
色:赤
モース硬度:7.5~8
劈開:なし
原産国:アメリカ合衆国
宝石言葉:永遠の若さ、幸福
② 歴史
冒頭でもご紹介したように、ベリルはエメラルドやアクアマリンと同種の鉱物です。
ベリルは、もともとは無色透明ですが、そこに別元素が混入することで、様々な色合いに変化を遂げています。
エメラルドやアクアマリンと聞くと、ブラジルが産地の候補として挙がるかもしれません。しかしながら、赤く色づいたレッドベリルは、アメリカ西部に位置するユタ州でしか採掘できない、とされているのです。
1904年、このユタ州内にあるトーマスレインジという場所で、鉱物学者のメイナード・ビクスビー氏がレッドベリルを発見しました。
それによりメイナード氏の名にちなんでビクスバイトと名づけられます。ただ、同じくビクスビー氏由来のビクスビアイト(bixbyite)という鉱物が既に存在していたため(見た目は後者は真っ黒で、似ても似つかないものですが)、しばしば混同されることがあったようです。
その後1950年代に入ると、同州南西部のワーワーマウンテンで、今度は宝石質のレッドベリルが採掘されます。鉱物学者レイマー・ホッジス氏の発見でした。
このえも言われぬ深紅の美しさを見出したレックス・ハリス氏がホッジス氏から採掘権を買い取り、「レッドベリル」の商業名を名付けます。この時点で、ジュエリーとして売買が開始されることとなりました。
ただ、レッドベリルという単語は、すぐにどのような石か想像できないようなわかりづらさがあったためでしょうか。ハリス氏は1994年、レッドベリルのさらなる販路拡大を求めて、レッドエメラルド社と提携します。そして、「レッドエメラルド」「スカーレッドエメラルド」の名前で販売を開始するようになりました。
なお、現在アメリカ国内では連邦取引委員会によって、レッドベリルに「エメラルド」の名を冠することは規制対象とされています。
レッドエメラルドの親しみやすい名前が功を奏し、レッドベリルは宝石業界でも一気に知名度を向上させていきます。「世界でただ一か所、ユタ州でしか採れない」といううたい文句もコレクターたちの心をわしづかみにしました。
ここに目を付けたのがリオ・ティントです。ピンクダイヤモンド事業や資源メジャーとして名を馳せる巨大コングロマリットですね。
レッドベリルの採掘権をハリス氏から買い取り、事業展開をもくろみました。
ただ、後述しますが、レッドベリルはユタ州の鉱山ですら稀少性が高く、宝石質で、かつ1カラットを超えるような原石が出てくることがほとんどありません。そのため商業ベースに乗せることが難しく、結局リオ・ティント社は採掘権を手放し、ハリス一家が取り戻すこととなりました。
なお、現在は既に枯渇しそうとも、採掘が行われていないとも言われており、現在流通しているレッドベリルは過去に採掘・販売されたものがほとんどです。
こういった背景がレッドベリルの存在感をさらに高めることとなり、コレクターズアイテムとしても注目されるようになってきました。
③ 特徴
レッドベリルの何よりの特徴と言えばその色合いです。そもそも、色が異なれば呼び方が違ってしまいますね。
ワインレッドのような深みがある赤色をしています。
これは、ベリルに混入した元素によって実現した発色です。
ベリルはベリリウムを主元素とするアルミニウムケイ酸塩鉱物となります。結晶系は六方晶系で、普通は六角柱状の結晶を持ちますが一律ではなく、先端が平らなもの・とがったものなど様々なタイプが存在します。
前述のように、ここに混入する元素がベリルの色付けを変えていきます。
例えばクロムまたはバナジウムが混入するとグリーンが美しいエメラルドに。
鉄が混入すると水色のアクアマリンに。
そして、酸化マンガンが混入するとこの深紅のレッドベリルが生成される、といわけです。
ちなみにベリルの中に、モルガナイト(アメリカ人銀行家P.J.モルガンにちなんだ石)やラズベリル(ペツォッタイト)と呼ばれる、マンガン由来の淡い赤を発色させるものがあります。
ただ、これらは薄いピンクに留まるため、濃い赤の個体をレッドベリルと区別して呼んでいます。
エメラルドやアクアマリンと同様に、ガラス光沢の美しさも大きな特徴となります。
なお、モース硬度は7.5~8とそこまで高くないこと。インクルージョンやクラック(クラック)を含む個体がほとんどであることから、緻密なカットには向きません。
このインクルージョンやクラックは何もしなくても宝石の耐久性を損ねてしまう要因となるので、レッドベリルはエンハンスメント(浸含処理)をしていることがほとんどです。浸含処理とは、樹脂やオイルを石にしみこませて目立たなくさせると同時に、クラックなどの穴を埋め強度を高めるための処理を指します。
これはエメラルドなどにも行われている処理のため、エンハンスメントを行ったからと言ってレッドベリルの買取査定額が著しく落ちるということはありません。
レッドベリルは稀少性もまた特徴のうちの一つです。
アメリカのユタ州のみを主な採掘地としていることはもちろん、1カラットを超える大きな石がほとんど採れないということもその稀少性に拍車をかけます。
宝石質の原石の産出がそもそも稀有で、ある地質調査では、宝石質のダイヤモンド150,000個に1個のレッドベリルが採れる、などとも言われています。
だいたい0.1~0.3カラットほどが通常で、0.5カラットを超えると価格が一気に上がります。
ただ、レッドベリルの美しい赤は遠目からでも目立つので、リングやネックレスなどで使われるメインストーンにエレガンスを添えるメレなどでも重宝されており、小さくても需要は高いと言えます。
ちなみにニューメキシコ、メキシコでもレッドベリルが発見された記録がありますが、いずれも宝石質のものではなく、商業ベースには乗りませんでした。
1990年代にロシアがレッドベリルの人工合成に成功しています。そのため大きい個体やインクルージョンがないもの、緻密なカットが施されたものは合成である可能性が高くなります。
ただ、現在では同国の研究所ではレッドベリルの合成を行っていないようです。
2. レッドベリルの買取相場
レッドベリルほどの稀少性になると、なかなか流通しないこともあり、一概に相場は言えないのですが、状態の良いものであれば数十万円を超えることもあるほど価値のある宝石です。
例えば色が濃く、インクルージョンが少なく、宝石としてのコンディションが良好なルースであれば、0.3カラットであっても30,000円~。
1カラットを超えると一気にその値段は上がり、20万円~と高額買取が可能です。
インクルージョンが多かったり発色が弱かったりする個体でも、レッドベリルと認められれば数千円~数万円の値段がつくことがほとんどとなります。
なお、稀にエンハンスメントが施されていないレッドベリルが存在します。
本物であれば、まず間違いなく超高額査定となります。
幸運にもお持ちでしたら、取扱に気を付けつつ、ぜひ一度査定に出してみてくださいね。
3. レッドベリルの査定ポイント
レッドベリルはその性質上、ダイヤモンドなどとは査定基準が異なります。
では、いったいどの部分を鑑定士は入念にチェックしているのでしょうか。
その査定ポイントをここで公開いたします!
① カラー
レッドベリルは大きさよりも、まず美しい色合いを査定・評価されます。
もちろんカラット数のある個体、インクルージョンなども大切な評価要素ですが、やはりレッドベリルはその赤があってこそ。
鮮やかで、濃く赤が発色しているものが高額査定となる傾向にあります。なお、ピンクに近いレッドベリルもありますが、赤が強い方がレッドベリルとしては評価が高くなります。
② クラリティ
レッドベリルはインクルージョンがどうしても入ってしまう石ですが、やはり少なくものほど高額査定となります。
また、欠けや傷などの瑕疵がある場合は、大幅な減額となってしまうことも。そこまで硬度の高くない石ですので、普段から取り扱いにはよく注意しておきましょう。
③ テリ・輝き
テリは光沢を指します。
クラリティが高いことに加えて、上質なカットが施されたデマントイド ガーネットは、このテリと輝きが強く美しく発揮されることとなります。
レッドベリルなどベリル系はファセットの少ないカットがなされることも多く、石そのものの光沢は重要です。
④ どのブランドの製品か
ジュエリー買取において、どのブランドのお品であるかは大変重要です。ハイブランドや人気ブランドのジュエリーであれば需要が高く、在庫が欲しいお店は少なくありません。
そういったブランドの製品であれば、付加価値が査定に加えられることとなります。
なお、購入時のメーカー保証書や化粧箱も付属品として査定対象になる場合があります。お持ちでしたら、必ず査定時に一緒に持ち込むようにしましょう。
⑤ 鑑別書の有無
レッドベリルのような稀少種はもちろん、色石は鑑定が非常に難しいと言われています。ダイヤモンドやゴールド・プラチナなどと異なり明確な評価基準がないこと。加えて天然石ゆえに個体による差が大きく、真贋の見極めも熟練したプロの鑑定士でないと難しいという面があることが理由です。
そのため鑑定書をお持ちでしたら、一緒に査定に出すようにしましょう。
万が一なくしてしまった、あるいは持っていない場合は、色石の買取に実績のあるお店をお選びください。こういった店舗は色石に強い鑑定士が常駐していたり、そのノウハウが共有されていたりするので、しっかりと適切な判断をしてくれます。
4. まとめ
エメラルドやアクアマリンと同じベリル族に属する、レッドベリルについてご紹介いたしました。
レッドベリルはアメリカ合衆国ユタ州でのみ産出される、世界的に見てもかなり稀少価値の高い宝石であること。採掘される原石も大きいものが少なく、稀少性に拍車をかけていること。そのため上質でカラット数の大きい個体は、数十万円~数百万円のお買取りがなされるケースもあることをお伝えできたでしょうか。
なお、当店GREEBERでは、レッドベリルの他、パライバトルマリンやゴールデンパール、アレキサンドライトなどの稀少宝石の買取を積極的に行っております!もちろん色石の鑑定ノウハウに長けた鑑定士が査定をさせていただきます。
使っていないレッドベリルのジュエリーがあれば、ぜひお気軽にお持ち込みください!