ゆらめくカラーが美しいオパール。その魅力や特性を解説!
日本で特に人気の高いオパール。鉱物でありながら水分を含有し、結晶質ではなく、しかも見る角度や光の加減で虹色のゆらめきを楽しめるという、非常に稀有な宝石です。
また、化石がオパールになる、なんて珍しい現象も存在します。化石の有機物とオパールを作る成分が入れ替わり、化石の形そのままのオパールができることがあるのです。ただ美しいだけではなく、化石にまでなってしまうオパールとは、いったいどのような宝石なのでしょうか。
この記事では、オパールの歴史や特性、産地やその種類について解説いたします。
1. オパールとは?
① DATA
鉱物名:オパール
和名:蛋白石(たんぱくせき)
モース硬度:5~6.5
劈開:なし
結晶系:非晶質
原産国:オーストラリア,メキシコ,ブラジル,アメリカ,インドネシアなど
宝石言葉:苦しみを克服して幸福を得る,無邪気,潔白
② 歴史
オパールと人類の蜜月がいつ始まったかははっきりとはわかっていませんが、古代ローマ時代には既に幸せや希望を象徴する「神の石」として親しまれていたようです。
ローマ帝国の博物学者であり、政治家や軍人としても活躍した大プリニウスは自著『博物誌』でオパールを紹介しています。
曰く、紀元前1世紀頃、ローマの元老議員ノニウスは、10cmほども大きいオパールを所有していました。それを見た将軍アントニウスが譲ってくれるよう頼みますが、ノニウスは拒否します。アントニウスは怒り、ノニウスを国外追放としましたが、ノニウスはそのオパールとともに去っていった・・・というものです。
なお、オパールの語源はラテン語のオパルスと言われています。これは、貴石を意味します。
オパール産地の一つであるメキシコでも、古くからオパールは愛されてきました。
1200年頃、当時遊牧民として狩猟生活をしていたアステカ族は、神事の装飾にオパールを使用していたようです。後述しますがメキシコ産オパールはオレンジや赤みがかった個体が多く、そのためハミングバードの宝石と呼ばれました。ハミングバード(ハチドリのこと)はメキシコでよく知られていた小鳥で、様々な色合いを持つ羽毛がオパールの虹色を彷彿とさせるためこの名で親しまれました。
そんなオパールは、現在日本国内で特に人気の高い宝石となっています。ちなみに日本では蛋白石という名称が広まりましたが、白いオパールが卵の白身などのたんぱく質とどこか似ていたため、そう呼ばれるようになったのでしょう。
宮沢賢治の作品にも何度か「貝の火」として登場しており、長年私たちの生活に根付いていたことがわかります。
③ オパールはどのようにできるのか
オパールは結晶を持ちません。それは、生成の仕方が他の宝石と異なるため。
オパールは地殻中の二酸化ケイ素(オパールの場合はシリカと呼ぶ)を含む地下水が濃縮・硬化したもので、そのため少量の水分を含みます。
生成のスタイルは大きく分けて二種類あり、まず、火成岩や堆積岩の隙間にケイ酸を含む熱水が充填して生成されるマウンテン・オパール。そして砂岩などの隙間にケイ酸を含む温水が充填して生成されるサンドストーン・オパールです。
ただ、オパールはこういった岩石・砂とは全く異なる生成方法をとることもあります。その主成分となるのは「化石」です。貝殻や樹木、あるいは動物の骨などの化石に含まれた有機物がケイ酸と置き換わり、そのまま固まってオパール化してしまう、というものです。これは貝などそのままの形に象られてオパールになることもあり、鉱物としては大変珍しい現象です。
また、地質学的な意義深さもあります。と言うのも、古生代に生息していた恐竜や哺乳類などの化石でも、少数ではありますがオパール化が確認されており、1987年にプリオサウルスがほぼ完全な形で発見されました。また、冒頭でも述べたように、2018年にはこれまで見つかってこなかった恐竜がオパール化されたことで、新種発見に至ります。
このように、オパールは見た目だけではなく、成り立ちの方法も他の宝石とは異なる、唯一無二のものであると言えるでしょう。
2. オパールの特性
オパールの特性を解説いたします。
① 遊色効果
オパールの主成分である二酸化ケイ素は水晶や石英なども生成しますが、オパールがそれらと全く異なり、一線を画す特性。それは遊色効果です。イリデッセンス、あるいはプレー・オブ・カラーとも呼ばれます。
遊色効果は光の加減や見る角度によって、色彩が様々な表情をゆらゆらと見せ、まるで豊富な色で遊んでいるかのように見える現象です。真珠やシェルなどにも見られますが、オパールほどはっきりと現れるものは他にありません。
オパールは基本的に白地の個体が多くなりますので、赤・青・緑・黄色・・・虹のような多彩な色を楽しみやすくなりますね。
これは、オパールに含有されるケイ素が影響しています。ケイ素の分子の隙間に水の分子が入り込むことでゆらゆらを実現しているのです。また、粒子の大きさによって、色味に違いが出てくることも特徴です。
なお、宝石は赤いものほど高い価値を持つ傾向にありますが、オパールでもそれは同じで、遊色効果の中で赤が強いものほど重宝されます。とは言え赤だけではゆらゆらとした遊び心は楽しめないもの。そのため多彩な色を持ち、その中で赤が強い、といった個体が高く評価されてきました。
ちなみに遊色効果が出ないオパールもありますが、明確に区別されています。遊色効果が出るオパールはプレシャスオパール、出ていないものはコモンオパール(ボッチカラー)と呼び、価格差も大きくなります。
② 硬度が低くもろい
オパールは硬度がそこまで高くはなく、また、結晶を持たないこともあり、少しの衝撃でも割れてしまうほどもろい宝石です。
そのため取扱には注意が必要。
カットもたくさんのファセットを持つようなものは適切ではなく、ステップカットかカボションカット、あるいはカメオなどが用いられます。ただ、オパールのゆらゆら,きらきらした遊色効果を楽しむためには、広い平面がふさわしいため、むしろシンプルなカットの方がオパールには似合っています。
③ 熱と乾燥に弱い
オパールは「ウェット」と表現されることがあります。これは、生成の過程で実際に水を含むため。質量の3~10%ほどは水だと言われています。
前述の通りこの水分は遊色効果を出す大切な要素。そのため乾燥には十分気を付けなくてはなりません。また、乾燥がひどいと、ひび割れてしまうケースも存在します。
また、卵などと同じように、いったん熱を加えると白くなってしまい、それは永遠に元に戻すことはできません。水分が蒸発したオパールを透蛋白石(ハイドロフェーン)とし、水につけると透明に変わるのでカメレオンパールと称して売ることもありますが、一般的ではありません。
これらのことから、乾燥や熱には注意しましょう。直射日光に当て続けたり、空調の風に直接当てたりすることは避けます。
ただ、オパールの原石はカットする前に天日で乾燥させ、それに耐えられたものだけをカットして製品化する、という手法が採られています。そのため日常で常識的な使い方をする分には問題ない場合も少なくありませんが、それでもデリケートな石。値段も安くはなかったと思いますので、大切に扱ってくださいね。
お手入れはお湯につけたり超音波洗浄を行ったりすることは避け、やわらかい布でやさしく拭いてあげましょう。
④ こんなオパールに注意!
安価なオパールは、そのほとんどがダブレット・あるいはトリプレットに加工されています。これは、簡単に言うと全部がオパールではなく、一部が安価な素材で構成されている、というもの。
ダブレットは二枚重ねのことで、オパールである部分は上部層の半分だけで、もう下半分の層は他の石が接着剤で張り付けられています。
トリプレットとは三枚重ねの意味です。1mmほどの薄さのオパールの下に黒い石やガラスやプラスティック・オニキスなどを接着し、その上から水晶やガラスなどでトップから挟み込み、サンドイッチ状にしたものです。そうするとボリュームが出てオパール自体の色合いも濃く見えるというわけです。
この加工ができたことで、純粋なオパール単体はソリッドと呼ばれ区別されるようになりました。
当然加工品は使われるオパールの量が少なく、安価です。
また、横から見るとオパールを貼り合わせていることがわかります。
ただ、ガラスやクリスタルがセッティングされたことで遊色効果が美しく見え、上質なオパールと間違えて購入してしまったケースもあります。もちろん安価にオパールを楽しみたい、という方は問題ありませんが、お店側が「本物のオパールだから」などと言葉巧みに商品を勧めてきて買ってしまった、だと話が違います。
オパールの購入の際は鑑別書や商品説明をしっかりと確認し、なるべく信頼できるお店をチョイスするようにしましょう。
3. オパールの産地
オパールの主な産地はオーストラリアです。現在流通しているオパールのほとんどがオーストラリア産と言っていいでしょう。
オーストラリアのオパールはサンドストーン・オパールに区別されます。
最も有名な鉱山がある場所はクーバーペディです。
南オーストラリア州に位置する都市で、オパールの都とも呼ばれています。
この町のユニークなところは、人々がダグアウトハウスと呼ばれる洞窟で居住していること。これはオパール採掘のために掘った坑道への入り口でしたが、クーバーペディは砂漠地帯で昼夜の寒暖差が激しく、穴の中で生活した方が合理的であるためこれが定着しました。現在ではエアコンが普及したことで地上の建造物も増えてはいますが、空から見るとまるで荒野のようなその風景は、クーバーペディのアイデンティティの一つになっています。
このクーバーペディはオパールが豊富に産出されるだけでなく、白地が美しく、透明度も高い極上の逸品が採れることでも定評があります。
オーストラリア以外の産地としてはメキシコが挙げられます。メキシコのオパールはマウンテン・オパールで、オーストラリア産とは全く様相を異にするのが面白いところ。
これら以外の地域でもオパールは産出されていますが、この二か所に比べるとそう多くはありません。
4. オパールの種類
生成過程が独特であることから、ひとくちにオパールと言っても様々な種類があり、呼び名も変わってきます。
代表的な5つをご紹介いたします。
① オーストラリアオパール
オーストラリアで採れるオパールです。
地が白の個体が多いため、ホワイトオパールとも呼ばれています。オパールと言えばコレ!と言えるほど、最も有名な外観でしょう。
白と遊色のコントラストが美しく、楚々としていながらも存在感を放ちます。
透明度が高く、かざすと向こう側が透けて見えるような個体はクリスタルオパールと呼ばれています。
② ブラックオパール
オーストラリアで採れるもので、現在オパールの中で最も高価と言われています。なかなか採掘されないので稀少価値は高いものの、日本ではよく出回ります。それだけ「高くても買いたい」というニーズが強いためです。ちなみにオーストラリアのライトニングリッジという鉱山でしか産出されません。
ブラックオパールは地が黒または青で、遊色効果が鮮明に現れることが特徴です。
赤色の遊色の割合が高いものが最高評価で、他の6色とともに虹色の輝きを放ちます。なお、真っ黒な地色に赤が鮮明に現れるものを特にレッド・オン・ブラックと呼びます。
また、オレンジやインディゴライト、グリーンなどが現れるものも美しく、高級品として扱われます。
③ ファイヤーオパール
メキシコ産のオパールはオーストラリア産とは異なり、地色が赤やオレンジなど褐色系であることが多いです。これは、メキシコのオパールが火成岩・堆積岩の中で生成されることが影響しているのでしょう。
特に赤・オレンジが濃いものはファイヤーオパールと呼ばれており、「真っ赤に燃える」と喩えられるほど鮮烈に赤が映え、その表層を遊色効果で多彩なカラーがゆらめく様は見事と言う他ありません。
なお、遊色効果がないものでも、ファイヤーオパールは稀少価値の高さからコモンオパールと呼ばれプレシャスオパールに分類されます。
④ ウォーターオパール
メキシコで、本当に稀に地色が美しい透明~青をしたオパールが見つかることがあり、それらはウォーターオパールと呼ばれます。
遊色に富んだものが高品質ですが、特に赤、橙、黄いろ、青、緑のピンファイヤー(ピンでつついたように細かな斑点が現れているもの)またはジュビア(水滴のような模様がついたもの)が確認できるものが上質です。
日本国内では、ブラックオパールに次いで高い人気を誇ります。美しい見た目から、ジュエリー用途だけでなくルースとしてコレクションされることが多くなります。これは、ルースの方がウォーターオパールならではの美しさ・色味を存分に楽しめるから、といった理由があります。
⑤ ボルダーオパール
ボルダーオパールとは母岩についたままのオパールをそのまま研磨し、産出した状態を活かしたものです。ちなみにメキシコ産だとカンテラオパールと呼ばれ、カンテラはメキシコで母岩を意味します。
あえて左右非対称の形を残し、裏面や表面には母岩がついた状態です。
ただ特殊と言うわけではなく、母岩から分離してカット・研磨すれば、通常のプレシャスオパールと変わりはありません。
5. オパールの価値の決まり方
オパールの価格はピンキリです。
当店GREEBRでオパールをお買取りさせて頂く際も、数百円~200万円程度の価格差がございます。
買取店はオパールのどこを見て、価値判断しているのかをご紹介いたします。
■透明度
メキシコオパール以外のオパールは遊色効果もあるためダイヤモンドのような透明度を誇ることはほとんどありませんので、色が濃く、透明度はむしろ無いほうが価格は高くなります。クラックやへこみなどがなく、雑味が少ないものほど高い価値を持ちます。メキシコオパールは逆に透明度が高い方が良いです。
■遊色効果
遊色効果がよく出ているものが高額査定の対象となります。これが美しいかどうかで、数万円~数十万円が変わってきます。
赤が強く、その他の色も発色が豊かなものが希少で高価です。
■模様が均一かどうか
オパールの遊色効果の秘訣にもなっている表層の模様は、ある程度均一でどこから見ても良い色のバランスがとれているものが高評価です。
6. まとめ
オパールについて解説いたしました。
オパールは鉱物の一種で、二酸化ケイ素(オパールの場合はシリカと呼ぶ)を含む地下水が濃縮・硬化したものであること。そのため乾燥に弱く、熱や衝撃にも弱いとてもデリケートな石であること。オパールを特徴づける遊色効果などについてご理解いただけたでしょうか。
どの宝石とも違った、不思議な魅力を持つオパール。日本国内では特に人気でよく出回っていますので、ぜひご自身に合った一つを探してみてくださいね。